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その旅客船は、毎日たくさんの人々を海の向こうへ運びます。小さな子供からお年寄りまで、実に年齢層は様々です。船が出航する前の楽しみは、近づいてきた雲にさわることです。それは空高くから人々の頭上まで降りてきます。どういった仕掛けになっているのかよくわかりませんが、とにかく綿菓子のようなやわらかそうな雲が手を延ばせば届く辺りまで降りてくるようすはなんだか飼い主にじゃれつくために近寄ってくる無邪気な子犬のようです。そして、人々はそんな愛嬌のある雲をさわることに無上の楽しみを覚えるのです。やがて出航を知らせる汽笛が辺りに響き渡ると、空へ延ばした数々の手は名残惜しそうに引っ込められます。