ライオン

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その雲は、競技場の上にぽつんと浮かんでいます。もちろんただいつまでもぼんやりと浮かんでいるわけではありません。それはやがて刻々と形を変えていき、最後にはライオンへと成長します。ここで注意しなければならないのは、完全なライオンとしての形を整えるまでになんとしてでも事に当たらなければならないということです。もしそのままにしておけば、あの野性味あふれる百獣の王を空へ放つことになるからです。かといってまだはっきりと形を成さないうちだとこれを楽しみに集まってきた観客たちを失望させることになってしまいます。そこで一機の小型飛行機の登場です。我々観客を楽しませるか失望させるかはこれを操縦するパイロットの腕にかかっているのです。つい先ほどまで空を旋回していたのが今、一気に降下をはじめました。はるか上空で絶妙なタイミングを見計らっていたのでしょう。そのまま飛行機は、木の葉がひらひらと風に舞うように、かつて雲であったもの、そして今やライオンになりつつあるものを二枚の翼を使って辺りの空へ散らしていきます。その間中、競技場から沸き起こる拍手がさざ波のように辺りに響き渡ります。